金木犀のエチュード──あなたしか見えない
2話/Jr.と呼ばれて
大学の内部受験者合格発表があった数日後のこと、その日は朝から空気が違っていた。
「周桜、腱鞘炎らしいぞ」と、あちらこちらで詩月くんの噂をする学生たちの様子が、何処かよそよそしかった。
文化祭の来賓アピールに「ピアノでショパンを弾け」と命じられた後、生徒会長に手を掴まれ呼び止められた詩月くんは、小さく呻き手を庇ってうずくまったと言う。
詩月くんを整形外科で見たという学生もいると言う。
昼休みに学長室に呼び出された詩月くんは、12時40分くらいに学食に入ってきた。
安坂さんと緒方さんが手を上げて、定食をトレイに乗せた詩月くんを席に招く。
「周桜、指の調子はどうだ?」
生徒会長が移動する詩月くんに声をかけた。
「他言するなと言ったよな」
詩月くんの目が生徒会長を捉え、険しくなり静かに言った。
「何のことだ」
「ふざけるな。知らばっくれるなよ。お前しか」
「周桜、腱鞘炎らしいぞ」と、あちらこちらで詩月くんの噂をする学生たちの様子が、何処かよそよそしかった。
文化祭の来賓アピールに「ピアノでショパンを弾け」と命じられた後、生徒会長に手を掴まれ呼び止められた詩月くんは、小さく呻き手を庇ってうずくまったと言う。
詩月くんを整形外科で見たという学生もいると言う。
昼休みに学長室に呼び出された詩月くんは、12時40分くらいに学食に入ってきた。
安坂さんと緒方さんが手を上げて、定食をトレイに乗せた詩月くんを席に招く。
「周桜、指の調子はどうだ?」
生徒会長が移動する詩月くんに声をかけた。
「他言するなと言ったよな」
詩月くんの目が生徒会長を捉え、険しくなり静かに言った。
「何のことだ」
「ふざけるな。知らばっくれるなよ。お前しか」