金木犀のエチュード──あなたしか見えない
「小百合。お母さんの詩月くん指導日記、あなた部屋に持って行ったままでしょう?」
部屋で寛いでいると母が部屋ドアを開けて訊ねた。
「コンクールの本選前には詩月くんに渡してあげたいの」
「わかった。ねえ、ママ……お婆ちゃまの日記、詩月くんの身体をスゴく気遣ってレッスンしたり、心配している記述が多いんだけど、詩月くん何処が悪いの?」
祖母の日記には詩月くんが、たびたび体調を崩し入退院を繰り返していることにも触れている。
夏場と冬場は特にレッスンを休む回数が多かったようだ。
「ママ……本当は知っているんでしょ?」
「小百合、詩月くんは身体のことをほとんど話さなかったわ。レッスン中に具合が悪くなっても、いつも倒れるまで我慢していた。薬を常に持ち歩いていたみたいだけれど、結局詳しいことは聞けなかったのよ」
「お婆ちゃまの日記にも、体調を崩したことや欠席したことは書かれてあるんだけど、病気のことは……」
部屋で寛いでいると母が部屋ドアを開けて訊ねた。
「コンクールの本選前には詩月くんに渡してあげたいの」
「わかった。ねえ、ママ……お婆ちゃまの日記、詩月くんの身体をスゴく気遣ってレッスンしたり、心配している記述が多いんだけど、詩月くん何処が悪いの?」
祖母の日記には詩月くんが、たびたび体調を崩し入退院を繰り返していることにも触れている。
夏場と冬場は特にレッスンを休む回数が多かったようだ。
「ママ……本当は知っているんでしょ?」
「小百合、詩月くんは身体のことをほとんど話さなかったわ。レッスン中に具合が悪くなっても、いつも倒れるまで我慢していた。薬を常に持ち歩いていたみたいだけれど、結局詳しいことは聞けなかったのよ」
「お婆ちゃまの日記にも、体調を崩したことや欠席したことは書かれてあるんだけど、病気のことは……」