青春のグラジオラス
 好きなことで生きていけたら人生きっと楽しいし、毎日に満足できるに違いない。スポーツ選手だったり、ゲームクリエイターだったり、自動車整備士だったり。その人が好きなことを思いっきりやって生きていくことができれば、僕のような生き方をしなくていいんだと思う。

 自分の生に何かしらの価値を見つけることができればいいのに。

 まだ朝日が眩しい時間帯なのに黄昏ながらいつものように考えていると一人の女生徒が視界に割り込んできた。僕のちょうど前の席だから視界に映るのは当たり前だけど、僕の見ている景色の七割近くを彼女の顔が占めているのはちょっとおかしい気がする。

 「やあ、哲学者倉木初くん。今日も自分の生について考え事かい?」

 

 
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