青春のグラジオラス
「実際、疲れるよねぇ。みんなの理想像に私を合わせるなんてさ。面倒ったらありゃしない。でも仕方ないんだよ。入学したときから仮面を被ってしまったんだから。今さらになって外したらみんなどう思うか。化けの皮が剥がれた私を見たら失望なんてものじゃないに決まってるよ。一種の信仰の対象みたいになってんだよ、私。あり得ないでしょ。そりゃ期待に応えてきたかもしれないけど、別に周りのためにやってきたことでもないし、応えるための努力なんてものもしてない。そんなことも知らずに、私を完璧なんて言って、憧れて、尊敬して、好きになったりして。ほんっと馬鹿じゃないのかな」
一度も息継ぎをすることなく、一気にそう言うと机の上に教科書諸々をどさりと置いた。バッグから出された諸々たちもなんだかくたびれているように見えた。
一度も息継ぎをすることなく、一気にそう言うと机の上に教科書諸々をどさりと置いた。バッグから出された諸々たちもなんだかくたびれているように見えた。