青春のグラジオラス
 そんなの屁理屈だと思えるようなことも、柚木が言うから本心だと分かる。彼女は僕に嘘を吐いたことがない。

 「だったらなおさらおかしい気がする。面倒だとか疲れるという言葉は嫌いという言葉の理由にいつでもなり得るものだろ。柚木はそうじゃないのか」

 無関心、というのもその一つかもしれない。興味のない科目の勉強は誰しも嫌がるものだ。植物の生長だとか、織田信長のしたことだとか、関心がなければ触れなくてもいいことだ。

 そんな興味のないことも、学校では勉強せざるを得ない。強制されていると言い換えることもできる。

 
 彼女の言う面倒だという言葉もその類ではないのだろうか。

 
 きっとこんなふうに質問してくる僕のほうがずっと面倒で疲れるのだろう。

 それでも僕は、純粋に知りたい。ルーツは似ている僕らが、こうも違う生き方をしている不思議のわけを知りたいんだ。

 「そうね。一般的には嫌いなものを並べる理由として上位五位以内くらいにはランクインしそうな言葉だけど、私はそれを理由に今の人間関係を崩したいとは思ってない」

 今度は顔をしっかり向けてそう言った。怒っているような、呆れているような、そんな表情だった。

 

 
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