青春のグラジオラス
 「お前だって、自分の力じゃどうしようもねえことの一つや二つくらいはあるだろう。例えば明日、世界中を巻き込むほどの核爆弾が日本に落とされるとか、何らかの天変地異で日本が沈没するとか、そういうのをお前がどうしようったって何もできねえじゃねえか。俺の場合のそのどうしようもないことは煙草なんだよ」

 ヨシさんのたとえがオーバー過ぎてどうも納得はしがたい。だって、ヨシさんが今言ったのは僕らの意志でどうにかできるものではない。それを煙草とイコールで結ぶのは、はたしてどうなのだろうか。

 いろいろと横槍を入れたい気持ちを抑えてヨシさんの言っていることにとりあえずは首を縦に動かす。

 「俺のたとえは雑かもしれねえけどよ、実際ほんとにやめられなくなってしまったんだから、核爆弾も天変地異も俺の喫煙と同じことさ。お前はお前の意志でお前自身を変えることができるか?」

 核心をつく問いに一瞬、返す言葉を見失う。
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