青春のグラジオラス
 僕はきっと、心のどこかで自分を変えることを望んでいる。それが叶えば、僕が見ている世界は今よりずっと肯定的なものになるのだと思う。

 
 綺麗な世界を見たくて、僕は変わりたいと思っている。


 けれどその一方で、変わろうとしない自分がいる。いや、きっと変わりたくないと思っている自分が僕の中には潜んでいる。それは矛盾しているようにも思えるけれど、なんとなく納得もできていた。

 こんな僕でも、僕は自分自身を好きでありたいんだ。嫌いな自分を好きでいたいから変われない。


 嫌いな自分を好きになりたいから、僕は変われないでいる。


 これもヨシさんの言うどうしようもないことなんだと思う。自分の意志では変えられない。変わらない。そう考えてしまった時点でそれは核爆弾や天変地異と同じものになってしまうんだ。


 だったら、僕には何もできないじゃないか。変わりたいのに変われない矛盾を抱えた人間も、自分らしく生きたいのに周りの印象通りの自分を演じなければいけない人間も、ずっとそのままでいるしかないのだろうか。
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