青春のグラジオラス
 変わりたい気持ちと、今の自分を好きでいたい気持ちと、どちらも僕の中に確かに存在している。矛盾した二つはせめぎ合うように僕の中にある。

 「分からないんだ」

 だから分からなかった。僕はどうすることでこの問題を解決することができるのか、考えても解法が見つからない。解法が見つからなければ手をつけることもできない。

 「今の自分を変えたい気持ちと今の自分を好きになりたい気持ちの、どっちが本当の気持ちか分からない。僕の中には確実に両方あるんだ。それは分かる。でも、どっちの気持ちに向かうのが正解なのか分からない。街灯のない道を歩くのは怖いよ」

 ヨシさんは大きく吸い込んだ煙草を勢いよく吐き出した。まだ十分吸うことができるはずの煙草の火を消すと、ヨシさんは険しい表情をして言った。

 「お前が言ってるそれはただの逃げだろうが」

 若干の怒りを含んだ口調で、ヨシさんはそう言った。

 
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