青春のグラジオラス
 「お前に限った話じゃねえよ。そりゃみんな正解を求めて生きてんだ。世間じゃ正しいことが正義だからな。でもな、お前みたいにどっちと向き合えばいいか分からずに進まないでいるのは、目先の問題から逃げてるだけだ。そんなもん分かれば苦労なんてしねえよ」

 逃げている。ヨシさんのその言葉は思いの外胸に突き刺さった。きっとそれが、ヨシさんの言っていることを肯定している証拠だろうと思った。

 「それに極論を言ってしまえば正しくなくてもいいんだ。たとえ世間が否定したとしても、自分が信じて進む道がいちばん大切だろう。その道は自分で悩んで悩んで決めたんだから、きっとそっちを選んでいてよかったと思える日がくる」

 正しくなくてもいい。

 その言葉は、なんだか大人に言われると変な気がした。

 「正しくあろうとして自分を押し殺すのは虚しいだけだ。この世界で大切なのは自分が信じたものを信じ続けられるかどうかだろう。それをできるのがどっちの道かなんてお前以外には誰にも分からない。お前が信じないことには何も始まんねえんだ」
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