青春のグラジオラス
 「あ、チャーハンもアジア料理だな」

 天然パワー炸裂。

 親父は料理を作るのが好きだ。時間があるときはいつもこうして世界のどこかしらの料理を作ってくれる。和洋中と幅広く精通していて、意外とその辺りの知識は豊富に持っている。どこでその知識を吸収したのかはまったくの謎だ。

 「よし。できた」

 とても美味しそうだ。スパイスの香りが食欲を刺激する。本を読もうとばかり思っていたのに、どうやら空腹には勝てないみたいだ。三度の飯より何とやらとはきっと嘘だ。

 「いただきます」

 ご飯の上に盛られた具材をかき混ぜ、口の中へと放る。ひき肉の旨みとレタスの瑞々しさがご飯とよく合っている。コチュジャンを使っているのだろうか、ピリッと辛い味も食を進める。半熟の目玉焼きがそこに加わると今度はマイルドな味になる。

 「我ながらいい出来だ」

 自画自賛とはまさにこのこと。けれど実際、本当に美味しいから何も言えない。それを口に出してしまうとすぐに調子に乗るから言わないでおく。

< 51 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop