青春のグラジオラス
 表紙をじっと見つめる。『忘れること、忘れられること』と書かれたタイトルの向こう側には女の子が一人空を見上げている。表情の見えない後ろ姿だけれど、物憂げなように感じた。

 意味ありげな表紙の絵と比べて、タイトルは思いの外ストレートな言葉で表現されている。その対比の意味、タイトルと絵の関連性、女の子が物語中での誰なのか…まったく考え始めたらキリもないようなことを読む前に考えてしまっている。

 無駄な思考を一度停止し、中身に入っていこう。


 -あなたの後悔は何ですか?-


 めくったページの一行目。視界に映った言葉に思わず硬直する。授業で急に先生に当てられたときのような、そんな感覚に襲われた。今は先生が答えを求めているわけでもないのに、僕は自然と自分の後悔が何かを考え始めていた。


 僕の後悔。


 ありすぎてどれを選べばいいか分からない。生きていれば誰だって後悔することはある。単純に後悔と言われても、どれを取り上げたらいいのか、見当がつかなかった。
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