青春のグラジオラス
 呼吸と同じ速度で、ページをめくっていく。一ページごとに言葉が僕の中を流れるのを感じられるのが、生きていることを実感させる。本が心臓なら、言葉は酸素だ。

 十数分の時間をかけて通学を終える。それとほぼ同時に物語も終わりを告げた。心が張り裂けそうになるような、綺麗な締めくくりだった。周りに誰もいなければ泣いていたかもしれない。

 思っていたよりもずっと早く読了したせいで、授業が始まるまでの間は手持無沙汰となってしまった。本当ならじっくりと、今日の学校が終わるまで時間をかけて読み終わりたかったのだけど、無意識のうちにペースを上げてしまっていたみたいだった。よっぽど自分が葛城奏に魅せられているんだなと思って、少し可笑しかった。

 生きる意味が分からないと言っている奴が、これほどまでにドはまりしていることがあるなんて、矛盾めいている。

 没頭できる何かがあれば、それは生きる糧になるのだろうか。
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