零れた液体に名前はつけない

 極限状態でありながらも緊張した面持ちの二人の為に、オナガは素早い対応を心掛けている。

 ここに来るモノは何時だって極限なのだから。

 「おまたせ、いらっしゃい」

 いつかみた、嫌な顔だと現れた男を見た男が思った。

 「自己紹介、そういえばしてなかったね」

 笑いながら言う男が長めの前髪をかき上げて言う。

 「…オレはニシメっす」

 男の後に続いて現れた青年は照れた様に笑んだ。

 「ヤシ兄の弟でホシのお兄ちゃんっす」

 おかっぱ頭の少女ホシは、持っていた本をオナガに没収され不機嫌に頭を下げた。

 「…ホシ…です」

 「僕はねヤシって言うんだ。よろしくね。カケスくんとミナミコちゃん」
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