零れた液体に名前はつけない

 「手当たり次第に人間を殺しまくってるってあんたらっすか?」

 それは何度目の夜だっただろうか。

 自分達以外の同種にあったのは初めてだった。

 それでも本能で理解した。

 人の姿を真似ていても、隠しきれない獣臭さ。

 狩子と名乗らずともその存在を認識出来た。

 どういう用件か、突然現れた三人組は彼女の前に放った食事を見ていた。

 獣同士が食事時に対面するということは、すなわち…略奪か。

 怯えた目で彼女が僕を見た。

 「…兄さん」

 「…大丈夫だよ」

 力のない人間としか対峙したことのない僕。

 力の差がどれ程か、全くわからない。

 やけにうるさい心臓の音は、怯える彼女の声でかき消された。

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