零れた液体に名前はつけない

 「…警戒しないで欲しいっす。なにも獲物を横取りしたいとかじゃないんすよ?」

 「…なんの用だ」

 「…ダメだ。ヤシ兄、バリバリ警戒されてるっすよ」

 髪の長い男は微笑を浮かべ、一歩引いて立ってた少女の髪を撫でた。

 「ホシが怖がってるからね…どうしようか」

 「別に怖くない」

 「オレじゃどうせ話きいてもらえないっすから、ヤシ兄から言ってほしいっす」

 「えー僕が?ニシメが言いなよ。僕は今ホシの頭を撫でるのに忙しいんだ」

 「はい?ホシも頭撫でられるのやめてあいつらに話してほしいっすよね?ね?」

 「ワタシは帰りたい」

 「ヤシ兄!」

 「あーはいはい。あのね君達。人間をあまり殺し過ぎると同種、つまり狩子ね。その人達に殺されちゃうよ?」

 「…つまり、僕達が殺し過ぎてるから君達が僕らを殺しにきたってこと?」

 「…っひ」

 怯える彼女の身体抱けば、少女の頭を撫でる男が首を傾げた。

 「ん?違うよ。僕らは狩子であって狩子でない。僕らはウツケモノ。世界の均衡と秩序を守る為にある存在なんだ。路頭に迷ってる同種(家族)を助けにきたって言ったらわかりやすいかな?」

 


 
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