うっせえよ!
「取材旅行」と称したひと夏の思い出。
チェックアウトの時間、ロビーの横にある食堂で誠司さんは、ネルシャツにチノパンといったラフな格好で、頭を押さえながらコーヒーをチビチビ啜っていた。
「昨夜、飲んだんですか?」
誠司さんは何も言わなかったが、昨夜飲んでいたのは明らかで、アルコールの匂いがオーデコロンの匂いと混ざって、冷房の力を頼って漂ってくる。
「……さては、また行きましたね?」
動揺したのか、誠司さんは手に持っていたフォークをカーペットの床の上に落とした。
「違う! 昨日は健全なバーだった!」
別にキャバクラとは言ってないのに、おろおろと言い訳がましい。
こいつ、行っている。間違いなく。