うっせえよ!
「でもそれだと、子供は納得しないですよ。お腹痛めて生んでくれて、いろんなことを教えてくれて、美味しいご飯を食べさせてくれて、ここまで育ててくれた恩恵は、何かしたいものですよ。」
「なら、こういうのはどうだ? 『親よりも先に死なない。最後を看取ってやる』ってのは。俺は仕事柄、それができないかもしれないからな。もしかしたら、それを親孝行だって思いたいだけなのかしれない。」
「いいじゃないですか、その親孝行。それに、両親よりも大事な仕事なんてあるわけないじゃないですか。」
「そうだといいんだけどな。」
この話を明日、藤原にしてやろう思ったのと同時に、無性に両親に電話をしたくなった。今なら照れくさくて言えなかった「ありがとう」も心の底から、素直に言えるかもしれない。
「誠司さん、お風呂入れますよ?」
「よし。それじゃあいただくとするかな。」
誠司さんは着替えを持って脱衣所に向かった。
この後姿を追いかけてしまうと、私たちの関係はどうなるんだろうか。少し興味があったけど、それはまだ先の話だろうなと思いながら、誠司さんの食べ残したケンタッキーの骨を片付けた。