うっせえよ!





誠司さんは深々と頭を下げた。



「幸せになります。そして、私の幸せで、娘さんも、子供も幸せだって思える、そんな家庭を必ず作ります。」



まさか父さんがそこまで私のことを想ってくれていたなんて知らなかった。



門限を5分破っただけで、締め出されたこともあった。



中学を卒業するまでケータイも持たせてくれなかった。



父さんの洗濯物と私の洗濯物を一緒に洗わないでほしいと怒ったこともあった。



成人式の後、父さんと一緒にお酒を飲む約束をすっぽかしたこともあった。



たまにくれる意味のわからないLINEのメッセージを無視したこともあった。



そんな不器用な父さん。



素直になれなかった私。



二人とも頑固で、似たもの同士で、やっぱり私たちは親子で。



そんな父さんの私から、今度は誠司さんの私になって、誠司さんとの間に生まれる子供の私になる。



私も一緒になって頭を下げた。



「今までお世話になりました。」との想いを込めて。



声に出せないところは、やっぱりまだ私が素直になれていない証で、



まだまだ子供だって証で、



まだまだ父さんの子供でいたいって親離れが寂しい気持ちの表れなのかもしれない。




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