うっせえよ!





料理はボリューミーでおしゃれ。



目でも楽しめる、味ももちろん美味しい。



こんなお店が東京にもあって、気軽に楽しめたらどんなにいいだろうと思う反面、このひと時は何か大事な時のためにとっておきたいと思う気持ちもある。



何より素朴な料理長のもてなしの心というものが伝わってくる。



きっと厨房を覗けば、より感じることができるんだと思う。これが料理で、おもてなしというものなんだなと気づかされる。



もしもこの場に、このクソアマがいなければどんなにいいだろう。



「お兄ちゃん、はい、あーん。」



この空気を壊すな! それに誠司さんは私のものだ! 取るな! 私の夫となる人を取るな!



「お兄ちゃん、お兄ちゃん。」



ああもううるさい。



「なんだよ?」



「結婚しても、私との時間、ちゃんと作ってよね?」



「わかってるって。」



そう言ったクソアマの表情は曇り、そう言った誠司さんの言葉を訊いて、今度はパアッと晴れる。



曇りのち晴れ。文学っぽい表現がぴったりな表情だった。




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