うっせえよ!
「おばさん! って、あの『大木りん』なんでしょ?」
「そうよ。お姉さん! は、『大木りん』なの。」
「大人の恋愛小説は好きだったのに、なんで『エゴイスト』なんて書いちゃったの?」
この質問には、驚いた。
よく握手会や雑誌の取材で訊かれることはあったのだが、まさか、まさかこのクソアマにそんな質問を受けるとは思ってもみなかったのだ。
「なんでだろうね。」
「もう今じゃすっかりサスペンス作家じゃん。友達言ってるよ? 『大木りん? ああ、あの人絶対に歪んでるよね。』って。」
まあそこは否めない。
歪んでいるから歪んでいるモノローグが浮かぶ。世間を斜に見ているから、性格の悪い主人公が出来上がる。
「私だって好きで書いてるわけじゃないわよ。」
「好きで書いてないのに作家?」
「好きで書いてないのに作家。」
クソアマは、首を傾げた。