うっせえよ!
犬猿の仲は、ただ仲が悪いだけじゃない。
パンジーで打ち切りの決まった小説の残りの原稿を直接納品しに、私は花の名社に赴いた。
藤原に頼んで取りに来させてもいいのだが、最後くらいは自分の手で渡したいという気持ちがあってからだった。
藤原は私の姿を見つけると、すっ飛んできた。
「先生! 正気ですか!?」
「正気ですかとは何よ?」
「あ、いえ、ここじゃなんですから……。」
藤原は私をロビーに連れてきた。
「本当なんですか?」
「本当よ。ほら、原稿。」
藤原はいつものように、「頂戴いたします。」と丁寧にクラフトパッカーを受け取った。
「って、そんなことじゃありませんよ!」
「そんなことって……あんたねえ、わざわざこうして直に納品しに来た作家に向かって、その言い草はないんじゃない?」
「そうじゃなくて……。」
「敬語も忘れたか……偉くなったなあ、藤原よ。」
「もう、いいです! 偉くなりましたとも。藤原は偉くなりました!」
からかうのはここまでにしておこう。