うっせえよ!





……行ってみなければ良かった。



大量に積まれた原稿……ではなく、空になったカップ麺、栄養ドリンクのタワー、椅子同士を重ねて作られたベッド、そこに横たわる無精ヒゲを生やした異臭のするおじさん……。



「こらっ! 10月の新井ちゃんの原稿は一体いつになるの!」



飛び交う編集長の怒号。



「編集長、そんなこと言ったって、新井先生は就活中でして……。」



「いいから今すぐ取ってきなさい! 取ってくるまで帰ってくるんじゃないわよ!?」



「そんな……新井先生は学生ですよ? 就活前でそれどころじゃないんですから……。」



「じゃあ、新井ちゃんにこう言っておきなさい。『原稿落としたら、方々に声かけて就職できないようにする。』ってね。」



そ、そこまで追い込むか、編集長……。



「編集長! 今、川下班の坂本が今、寝てました!」



「お、馬鹿! 寝てねえよ!」



「ははん。そう。私だって寝てないのに、随分偉くなったじゃないの、坂本ぉ……。よーし、わかった。罰として川下班、全員にんにく注射追加。」



にんにく注射って……あれか? 3日寝ないでも頑張れちゃうあれか?



そこまで私の特集に懸けているのか、この人は……。



とてもじゃないけど、顔出せない。顔出したらここの編集部、全員からにらまれる……。



「あら、りんちゃんじゃない!」



げっ! 見つかった……。




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