うっせえよ!





「ええそう。幸い、りんちゃんは今、花の名社の月刊パンジーでラブストーリーの長編の連載をしているわよね? 担当は藤原くんだっけ? 元カミツレの編集部にいた。」



「ええ、間違いありません。」



「そのアンケート結果は知ってる?」



「最悪ですね。最下位争いとはこのことです。まあ、パンジーは純文学主体ですから、24歳の書く甘々したラブストーリーはどうしても浮いてしまうんじゃないかと……。」



「そう。このままだと打ち切りは必須。もう取り返しはつかないでしょう。このままだとりんちゃんは、カミツレどころか、花の名社自体で書けなくなる。」



「書けなくなれば、彼女はきっと他の出版社に取られてしまいますね。」



「それは何としても避けなければならないわ。『エゴイスト』を輩出しておいて、他の出版社に取られるなんて、赤っ恥じゃない。まことちゃんも私もどこへ飛ばされるかわかったもんじゃないわ。」



「クビも覚悟しなければなりませんね……。」



「そこで、りんちゃんには恋愛モノの短編を書いてもらって、それを次の次、つまり10月号で載せる。インタビュー記事やスチールなんかと一緒にね。10月は確かりんちゃんの誕生日でもあるし、誕生日特集とでも銘打てば、問題ないでしょう。」



「それで、書かせてどうするんです?」



「アンケート欄に『大木りん先生の今回の短編について』の質問を載せて、反応を見る。読者の意見を聞いて、好評だったら11月号の連載会議に恋愛モノで原稿を回す。ダメだったらサスペンスを回す。それでどうかしら?」




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