うっせえよ!
「しかし、それでもし、サスペンスのほうがいいという意見が多くて、彼女がサスペンスを書けなかったときはどうするんですか?」
「その時はその時。花の名社で書けなくなったらそれまでだし、りんちゃんが読者の意見を聞いてサスペンスに目覚めればそれはそれで万々歳。」
「は、はあ……。」
「とにかく一度、好きに書かせてみなさい。仮にもりんちゃんは元々、『大人の恋をメルヘンに描く鬼才』としてカミツレで売り出したんだから。」
「……わかりました。そう伝えます。」
「あ、待って。追加注文!」
「はい? 酒ですか? 料理ですか?」
「そうじゃなくて、りんちゃんに恋愛モノを書かせる条件。」
「条件?」
「そう条件。恋愛モノを書くには、それなりの経験がないと書けないっていうのが私のポリシーでね。以前は恋愛モノをスラスラ書けていたようだけど、ブランクがある。それに見るところ、りんちゃんは恋愛経験が豊富じゃなさそうじゃない?」
「まあ、そういう話は聞きませんね。」
「そこで、まことちゃん。あなた、しばらくりんちゃんと一緒に住みなさい。一緒に住んで、夫婦のように生活すれば、いい話が書けると思うの。あ! その生活の様子を小説にしてもいいかも! いい? まことちゃん。これは業務命令だからね? 断るならもうチャンスは与えないってりんちゃんにも言っておいてちょうだい。」