うっせえよ!





「とにかくこれはお前にとってはチャンスだろう。おそらく、花の名社で恋愛小説を書くためのな。もし、その短編がポシャっても、割り切ってサスペンスを書けばいい。年内の連載はないだろうけど、その間は花の名社と年間契約を結んで、充電期間も兼ねてゆっくり連載を目指せばいい。」



まあ、そう考えるのが普通だし、唯一花の名社で生き残る道と言ってもいい。三村さんの話では、パンジーの連載は打ち切りまっしぐらだし、サスペンスを書いて連載会議に回して、優遇されているものの、それが通る可能性も100%とは言えない。



となれば、チャレンジする価値はある。失敗しても保険もある。その間、他の出版社で小説は書けなくなるが、お金は入る。講演会や雑誌の取材もすべて花の名社が間に入ることになるだろうけど、その分、マネジメントもつく。



ただ、踏ん切りがつかない。その理由は三村さんの課した条件だ。



……この男と同居などできるだろうか。



ゴミ屋敷の住人、おまけに言い訳がましく、小うるさい男とのラブストーリーなんて書けるだろうか。



それも、ラブストーリーに重きを置いているカミツレで、王道ラブストーリーを何年も連載している先輩作家と渡り合えるほどの作品が私には書けるだろうか。



自問自答を繰り返す。その間も誠司さんはバラエティー番組を観ながらゲラゲラ笑っている。放屁している。集中力が途切れる。イライラする。



見ようとしないものは見えない。なんて言葉を遺した奴は本当に死ねばいい。見ようとしないようにすればするほど、見えてしまうこの状況。ああ、最悪な災厄。




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