うっせえよ!





「なるほど……でも、私は骨なしの方が好きですね。骨があると邪魔で、食べづらいですし、手が油でベトベトになりますし……。」



「はあ? あれがいいんじゃないか。頑張って走ってゴールを決めた後に流す汗と涙って感じで。」



「汗でベトベトなんて気持ち悪いですよ。私ならお風呂直行ですね。」



「……お前、文化系だったろ?」



「悪いですか?」



「いるんだよなあ、そういう文化系出身の奴って大体、ネクラでしんどいことが嫌いで、そのくせわがままで。うちの新入社員なんて30人近く取ったけど、今残ってる奴なんてたった5人だぞ?」



いや、確か一昨日の飲み会でパンジーに配属された新入社員が辞めたいって相談してきたって藤原が言ってたから、そのうち4人になる。



「でもそれって、ゆとり世代だからじゃないですか?」



「じゃあ訊くが、ゆとりってなんだ? 土曜日に学校がないのがゆとりか? 土曜日に学校に行かないだけで軟弱な人材が育つのか?」



「そ、そうは思いませんけど……。」



「部活なんだよ。部活がすべて。昔の、それこそ俺たちの時代なんて、練習中に水もろくに飲ませてくれないようなキツイ練習してたからな。稲妻が走る中、泥だらけで落雷に怯えて練習してたあの頃が懐かしいよ。」



それは一理あるかもしれない。部活がきついと、社会が緩く思えるみたいなことを明美から聞いたことがある。



明美は全国大会常連校のハンドボール部出身で、寮生活をしていたらしい。まあ、明美の場合は短大ではっちゃけちゃって、未成年の飲酒喫煙で警察の厄介にもなったことがあるから、ある意味軟弱で、参考にはならないが、仕事に対しての愚痴は、勤務がきついとか、肉体的なものはない。



「運動部出身者は肉体的にも精神的にも強い人材が育つ……かあ。」



「そういうことだ。」




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