優しく愛した
「…すきよ、私はオナガが」
それは、本当に狡い言葉。
逃げだ、他に返し様の無い逃げのことば。
オナガから離れたベニハシが、独り言のようにいった。
長い右の髪を引っ張りながら言うから、自分に言い聞かせているように見えた。
自分を責めているように見えた。
大切にしたいと思っているのに、想いの深さに比例して傷つけていた。
向ける想いの数だけ、彼女を追い詰めている。
他の比べるなんてしない、してはいけない。
それでも比べてしまうのはあいしているから。
かける言葉がなくて俯いた。