優しく愛した

 「…これは呪いなの」

 話題を変えてもよかったが、ベニハシの元恋人がどういう人か興味が沸いた。

 他の仲間から存在だけは聞いていたが、その姿は謎のまま。

 仲がよかっただとか、いつも一緒だっただとかそんな腹の立つ話は聞けど、嫌な話はなかった。

 それが本人から呪いという言葉が出るのだから、好奇心が沸いた。

 「呪いって?」

 片側を伸ばす約束でもしたのか。

 それなら聞くに堪えない、本当に嫌な話になるとオナガは自身の質問を悔やんだ。

 「…昔、左の髪をミヤマに切られた…」

 「…どういうこと?」

 よっぽど怒らせたか。

 女の命たる髪を切るのだから。

 だが、恋人たるオナガにはベニハシがそんなに相手を怒らせることをしたとは考えられなかった。

 「…昔、左の髪が男に触れたからってミヤマが怒った。それで謝ったけど許してもらえなかった。だから切られた」

 何も言えなかったのには理由があった。

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