優しく愛した
聞いたことを本気で悔やんだ。
未練、それも形に残すまでの想い。
過ごした時間の長さも、共有した思い出も全てがまだ過去の人間に劣ると思い知らされた。
苛立ちを口にはしない。
それでも、思わず聞いていた。
「…名前を呼んで」
「…名前?」
「…私の名前。あなたに呼ばれたい」
嫉妬心からの言葉だと容易に想像できる。
愛しいベニハシの瞳の中に自分が映っていることを確認したくて、のぞき込んだ。
「…オナガ」
「もっと」
「オナガ」
「すき?」
「うん」
「ずっと?」
「うん」
「…一番?」
「…うん」
その間を、いつもは許せていた。
だけど、今はどうもそうはいかない。
くだらない嫉妬。
試すような言葉。
大人げないと知りながら、背中に回されたベニハシの手を解き立ち上がっていた。
「…オナガ?」
「…少し、距離を置きましょうか」
子供っぽいと知っていながら、冷静になれない自分に嫌気がさした。