あかすぎる、恋に。

「はい」

俺はその人に衣装を渡すと、ポカンとした
顔で俺を見てくる。

え、衣装何か渡してどうすんだって?


「これがなきゃ、舞台に出れないんだから」

そう言うと、理解したように頷いて着替え
室へと入っていく。

それを見ていったん落ち着くみんな。

数十秒たって、カーテンがガッと勢いよく
開いた。


・・・・舞台の方、まだ踊ってんのに。
急いでるねぇ、なんて呑気な事を考えてしまう。


「・・・・・・ねぇ」」

クラスの女の子が、舞台の方と俺の方を
交互に見て不安そうな顔をした。

「んー?」

「大丈夫なの?あれ。アドリブだけど」

本気で心配するクラスの子をよそに、
面白がって答える。

「んー・・・・どうだろうね?」

「え!?」

無責任な俺の返事に、その子はびっくりして
舞台の方をバッと振り返る。

少し騒がしくなってきたかな。

「うそうそ。・・・あれで結構、ちゃんと
している人だし。・・・・悔しいけど、何でも
乗り越えちゃう人だから。」


そう、周りの目とか期待とかそんなの気にしないで、
それでも乗り越えてしまう奴だから。

羨ましくない、なんて言ったらウソだ。

だけど俺は。

そんなお前『ら』がわりと結構好きだし。



「・・・・ホント、凄い人だし」



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