あかすぎる、恋に。

『昔から共にいたのに、大事な人だったのに、
お互いに気付けずにいた二人』

これは莉雨の声。

ハッとして客の方を見ると莉雨の姿はなかった。

きっと状況を把握して、唄鳥君の所まで
駆けつけたのだろう。

『けれど彼の方はシンデレラが王宮へと
行ったことにより、彼女の存在の大きさを、
改めて知ったのです』


それはシンデレラに言っているのだけど、
私にもなぜか心に響いた。

胸がジンとして、痛い。

気をゆるめれば、泣いてしまいそうだった。

『ねぇ、シンデレラ』
莉雨と唄鳥君の声が重なっている。

これはもう、台本とかナレーションじゃ
なかった。

問いかけだった。


『大事な人も、大事な事も、気付けたでしょ?』

その言葉が耳に届いた途端、私の心が
言葉になって溢れ出す。


「近すぎて、見えなくなって、傷つけて!」

いっこうにクリアにならない視界。

「諦めようとして、駄目で・・・!!
私っ!!」

シンデレラは、王子様と結ばれてハッピーエンド。

誰もが望む、終わり方。


だけど私はわがままだから。
「私、妥協なんてしたくない!!」

王子様と結ばれるなんて、きめつけられた
終わり方なんて、妥協と同じ。





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