あかすぎる、恋に。
―――――――――――だけど親父は。
顔の知らない、覚えてもいない親父は。
本気で母のことを愛したんだろう。
そうであってほしい。
「俺の親父は!!親父は!!!」
‘親父’という単語を出したのが、母には
どう思ったのか、顔を強張らせている。
「あんたのことを、本気で愛したんじゃ
ねーのかよ!!!」
写真立ての中に写っている写真の中の
俺と母親。
その頃にはもう、親父はいなかったらしくて。
その時の喪失感は分からないけど。
きっと俺にも母親にも、もちろん親父にも
純粋だったころはあった。
だけどいつからか、母親のことを嫌って。
理由何か分からないのに。
仕事だけで俺をかまってくれない、表面
だけの母親が、たまらなく嫌だった。
「・・・あんたがその男をどうしようか
なんて、俺には言えた口じゃないよ。」
愛し方、それぞれだし。
冷めてしまう愛だってあるし。
独りよがりの愛だってあるし。
寂しさを埋めるための愛だってあるし。
「だけどさ・・・・・!!」
親父が死んだ悲しさを埋めるためだけの、
その場しのぎの愛なんて、
きっと自分を苦しめるだけだから。
「親父のこと、忘れちゃ駄目なんだ・・・!
表面だけ着飾っても、だれも救われない!!
・・・・少しだけでいい。だからさ!」