恋なんていたしません!
「終わりました」

水を巻いて水切りをして床をキレイにする――本当に簡単に冷蔵庫の掃除を済ませると、塩サバの値段を貼りつけている伊勢谷さんに声をかけた。

「うん、ありがとね♪」

伊勢谷さんは笑顔でお礼を言った。

悪い人ではないんだけど、その笑顔は胡散臭くて仕方がない。

これだから3次元の男は大嫌いだ。

イライラを我慢しながら少なくなっているトレイを出して並べると、
「じゃあ、お先に失礼します」

冷凍庫にいる伊勢谷さんに言った。

「うん、お疲れ様」

「お疲れ様でしたー」

伊勢谷さんに返事をすると、わたしもその場から立ち去った。

あーあ、田ノ下さんよりも15分遅れて帰るはめになったじゃないのよ。

冷蔵庫の掃除って言う余計な任務がなかったら3分…いや、1分もかからないで帰ることができたのに。
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