恋なんていたしません!
一体何なんだよ、渡すものは渡したからとっとと帰ろうと思ったのに。

「…はい、何でしょうか?」

そう聞いたわたしに、
「せっかくですから、お茶を1杯出しますよ」

一ノ瀬が言った。

「お茶ですか?

わたし、そんなつもりでお礼を出した訳ではないんですが…」

そうだよ、こっちだってそんなつもりでりんごのお返しをした訳じゃねーんだよ。

「この間はレシピを教えるために勝手にお邪魔してしまったので、野々村さんもどうかと思いまして…」

一ノ瀬が言った。

ああ、それでおあいこにしましょうってか?

確かに勝手にお邪魔されてムカついたと言えばムカついたけど、それでどうにか清算しましょうと言う意味がわからない。
< 61 / 102 >

この作品をシェア

pagetop