恋なんていたしません!
まあでも、勝手にお邪魔されたうえに現実を見ろだの依存するなだのと説教を受けたのだ。

「お茶1杯だけなんですよね?」

そう聞いたわたしに、
「ええ、そうです」

一ノ瀬さんが答えた。

お茶1杯だけかよ…と言うのは、別にいいか。

飲んだら今度こそとっとと帰ればいいだけの話だ。

「じゃあ、お言葉に甘えて…」

そう言ったわたしに、
「どうぞ」

一ノ瀬はドアを開けてわたしを中へ入るようにと促した。

「お邪魔します」

わたしはあいさつをすると、玄関に足を踏み入れた。

当たり前だけど、部屋の中は同じ造りをしていた。

靴を脱いだのと同時に、ツンと変な匂いが鼻をついた。
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