恋なんていたしません!
薬品のような匂いだった。

こんな匂いがする洗剤があるのか?

…そんな訳ないか。

そう思いながら一ノ瀬と一緒に部屋の中へ入ると、
「どこか適当なところに座っててください。

すぐにお茶を用意します」

彼はキッチンの方に行ったので、わたしはリビングへと足を向かわせた。

「すごいな…」

リビングを見回したら、そんな言葉が口からこぼれ落ちた。

特撮関連のフィギュアにポスター、さらにはグッズまでと勢ぞろいしている。

ふとテーブルのうえに視線を向けると、作りかけのフィギュアがあった。

ああ、なるほど…と、テーブルのうえを見たわたしは納得した。

匂いの原因は薬品ではなく、着色する絵の具だったのか。
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