たった1度のその恋の名は
いつにも増して強い日差しが僕を照らす。
気温は30度を悠々に越しているそうだ。
いい高校に入る為に、夏期講習に行くのは当たり前のこと。でも、それを分かっていても僕は、夏とは仲良くできないよ。
「今日、このグループの皆でご飯行かない!?」
夏期講習が終わり疲れている体に、元気いっぱいの声がした。
うるさいなぁ~。静かにしてくれよ。
「俺はパスで」
「えー。成神君も行こうよ~」
自分が受験生だってこと忘れているのか?
まぁ、そんな時があっていいと思いが。でも、僕はそういうのは苦手なんだ。誤解しないでくれよ?嫌いじゃない。苦手なだけだ。
「んな事言わないで、行こうぜ修斗」
俺の、親友と呼んでもいい男がまた誘ってくる。
だが、俺の気持ちは変わらない。
「やだ。こういうのは翔矢の仕事だろ」
その、翔矢が微笑みながら言う。
「仕事ってなんだよ。それに、お前はまだこういうの参加したことないだろ?」
これは、時間がかかる。なら、言う言葉は、ひとつしかないだろう。精一杯の演技とともに僕は言い放つ。
「行けたら行くよ。場所だけメールしてくれ。」
よし、完璧。これでもう翔矢は誘ってこないだろう。と、思っていたのだが。
伊達に僕と親友やっていない。僕の思考は一瞬でバレてしまった。
「それ、来ないよね?何度お前が使った手だと思ってるんだ?もうそろそろ、俺だってわかるぜ?」
こうなると無理だ。素直に承諾して置いた方がいい。ため息混じりに、こういうしかない。
「分かった、行くよ。じゃ、また後で。」
そう言って僕は家へと向かい始めた。だが、僕は、そのご飯に行かなかった。
決して行かないつもりだったわけじゃない。信じて欲しい。
なら、何をしていたのかって?なに、そんな大層な理由ではないよ。ただ、女の子を救っていただけさ。
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