BORDER LINE
俺は、京介に、かの日の初恋の想い出を、つらつらと語って聞かせる。

「つぅわけで、これが、俺の初恋な。その女が俺になびかなくってさぁ。んで、京介。その女の子にトゥンクさせるテクとかねぇ?」

♪チャッチャラチャッチャーチャーチャッチャラチャーチャー

モテテクの代わりに、京介から返ってきたのは、陽気なメロディー。

京介の指先は、未だ、タッチスクリーン上を光速移動している。

「おい、京介、ちゃんと聞いてんの?」

俺が京介の肩をポンポンッと叩くと、京介の悲鳴が、教室中を響き渡った。

「あ゛ぁ゛〜〜〜!コンボ途切れたァ〜!おまえのせいで、2626の1000万点越逃しただろーが。」

京介は、ギャースカギャースカ、ひとしきり喚きちらしてから、顔を寄せ、声をひそめた。

「んで、誰落としたいんだよ?」

なんやかんや、こうして俺の恋バナにのってくるあたり、良いやつなんだろう。

「あいつ。」

俺は、視線だけを、幼なじみ兼大大大本命の女へチラリと流す。

意中の女は、俺の熱い視線に気がつきもせず、本日六つ目のおにぎりに、ハムッと食いついていた。

京介が、ほぉーっと、感嘆の声をあげる。

「朝倉 佳純(アサクラ カスミ)ね。おまえの幼なじみの女じゃん。んで、いつから?ヤベー、俺、アイツのこと、ただの幼なじみに見れねぇ、的なベタ展開に突き進み始めたのいつ?」
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