BORDER LINE
自らへの不信は、

根拠なんて1ミリもないくせに、それでも、絶対としてきたものへの不信は、

ヒトをバカみたいに大きな不安へと突き落とす。

私は、頭を、首根っこからちょん切れそうなほど、ブンブン振りまわし、そんな不安を振り切ろうとした。

そんとき、

カタンッ———

「東センパイ……」

背後の微かな物音に、

パッと振り返ると、黒髪ロングの女の子が、白木のイーゼルにキャンバスを立て掛けているところだった。

「……じゃあないわね。」

上ぐつは、赤い縁取りのもので、きっと同んなじ一年生だ。

その女の子は、真性のいい子ちゃんなのか、はたまた、制服を改造するだけの気力が起きないのか。

女の子のセーラー服のスカーフは、襟んとこをピンで摘んでいないようで長ったらしいまんまだし、

プリーツスカートもピッタシ膝丈だった。

(私も、この子と同んなじような着こなしだが、その理由はまちがいなく後者である。)

———ま、どうでもいいけれど。

興味の芽は芽吹いた瞬間、枯れかかり、

私は、視線をフイッと逸らし、そのまま、手元のキャンバスに落とす。

すると、すぐに、

「ねぇ———」

誰だったろうか、確かに聞き憶えのある声が降ってきた。

視線をキャンバスから、ちょっぴしずらせば、赤い縁どりの上ぐつがパタパタと近づいてくる。

パッと顔をあげると、

気味が悪いくらいにニッコニッコして、女の子が、私を見下ろしている。

———黒髪ロングで、制服の着こなしがダッサイ女の子。

その女の子は、紛れもなく〝私〟であった。

〝私〟の口元が微かに動く。

「私、朝倉 佳純。あなたって、ものすんごく私に似ているのね。」
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