BORDER LINE

朝倉が越してきたのは、俺ん家の隣の、〝万年空き家〟であった。

ご丁寧にも、朝倉は、アホみたいに優男そうな父親と、引っ越し蕎麦まで抱えて、家に挨拶しにきやがった。

朝倉に母親はないようだった。

近所のおせっかいババァ共が、上っ面だけ心配そうに取り繕って、そのことを問い詰めると、

嘘がつけない性格なのであろう、

あんのアホ優男は、

「妻には逃げられちまいましてね。ここに越してきたのも、気分転換みたいなもんでして。」

と、バカ正直に応え、そして、どこか寂しそうにハハハと笑った。

———おめぇが、そんなんだから、奥さんに逃げられたんじゃねーのか、優男?

———あと、ババァ共マジうぜぇ。下世話もいいとこってんだ。

登校途中のゴミ捨て場。

下世話なババァ共と、頼りなさげなアホ優男の姿を見かける度に、俺はそう思った。
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