BORDER LINE
★【Side.一ノ瀬】
9月のとある日、俺は、朝っぱらから、風邪薬を口に放り込み、冷えピタシートをパシーンと装備して、三枚重ねの布団を被っていた。

つまり、俺は、風邪で寝込んでたってわけだ。

俺が、目ぇ覚ましたのは、午後五時であった。

側のカーテンを、シャッと、引くと、柔らかな西日が射し込む。

昼飯時なんてとうに過ぎ去っていたが、

母は、風邪で弱りきってる息子を放ったらかして、オジちゃんアイドルのライブに出ちまったし、別段、腹が減ってるわけでもなかった。

俺は、鉛みたく重てぇ身体をずり起こし、枕元の水をあおる。

体温計を脇に差せば、

きっかり3分後、そっけないデジタルフォントで、7度9分と表示された。

そりゃ、まだ、身体が、ダリぃわけだ。

———もう一眠りすっかな。

———つか、悪寒がするんだけど。

俺は、いそいそと、ぬくい布団に潜り込む。

と、そんとき、不意に西日が遮られ、アルミサッシの窓が、コンコンとノックされた。

重い頭を上げてみると、何やら丼を抱えた朝倉が、ヒョコっと、顔を覗かせていた。

俺と、朝倉の部屋は、屋根伝いに窓から互いに行き来できるとかいう、

幼なじみ系少女漫画あるある仕様となっている。

「一ノ瀬、風邪ひいたんだってね。ダッサイの。ね、窓、開けてよ?あんたの母親から、メールがあったの。何にも、食べてないんでしょ?ゴハン作ったわ。」

———え?!何コレ、風邪イベント?え、何、ラブコメ?ラブコメ展開なの?
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