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「調子どう?カツ丼とか、食べられる?ほら、カゼ菌に〝かつ〟みたいな?」

上手いこと言ったんじゃない?、と、朝倉は、フフンとドヤ顔をしてみせる。

朝倉が、丼の蓋をとると、ホワホワ〜ッと、白い湯気があがった。

湯気の中、カリッと揚がったトンカツに、ブルドッグソースがテラテラと輝いていた。

油っこいカツ丼。

また、朝倉が俺んために揚げた、っていう、プラスアルファの特典付き。

フツーの男子高校生である俺なら、飛びつきそうなもんだが、残念ながら、そんとき、俺は、ひでぇ風邪を引いていた。

思わず、オエッと、口元を押さえる。

「食えるわけねぇだろーが。病人に、そんな重てぇもん食わせんな。バカが。」

「私は、熱ピーピーでも、カツ丼とかバクバク食べられるんだけど。」

朝倉は、コテン、とさも不思議そうに、首をかしげた。

「おまえはな。フツーの胃袋してる俺は、無理だわ。」

「んで、何なら、食べられんのよ?」

朝倉は、不満そうに唇を尖らせる。

「粥とか、おじやとか、じゃね?」

「お粥?おじや?そんな弱っちいもの作ったことないわね。ま、ググれば、作れるかしら。ちょっと、家戻って、ためしてみるわ。」

朝倉は、相変わらずのへらず口を叩きながらも、既に、窓枠に右足を掛けていた。
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