BORDER LINE
だが、年を重ねるにつれて、大人に近づくにつれて、朝倉は、泣かなくなった。

たった一つの朝倉の逃げ道は、ただの窓になってしまった。

朝倉は、どんなに悲しくったって、辛くったって、無理に笑うようになった。

こんなふうに、ブサイクな面して、笑うようになった。

「何言ってんのよ?あんたの看病に決まってんじゃないの。」

———嘘つけ。

———朝倉は、俺の看病なんかしてる暇があれば、何かモノ食ってるか、絵を描いている女だ。

それでも、俺は、朝倉はそんでいい、と思っていた。

朝倉は、泣かなくなった。

けれども、時折、朝倉の眸には、暗い悲しみが澱むようになった。

俺は、それが、堪らなく嫌だったのだ。

同い年の女共は、何にも考えてねぇような顔して、キャハキャハ笑ってんのに。

朝倉だって、十七の女なのに。

「部活は?最近、絵ぇ描いてねぇみたいだけど。」

朝倉は、俺のコトバに、あからさまに、肩をびくりと震わせた。

「……休部中なの。ちょびっとだけ、悩むことがあって。」

———こりゃ、ちょびっとじゃねぇ何かが、あったな。

「あっそ。」

そっけなく返しながらも、俺は、朝倉の眸を探る。

朝倉は、フイッと、眸を逸らした。

「心配しないでよ。私も、もう高校生だもの。あなたに泣き面晒したりしないわ。」

コトバに反して、朝倉は、今にも泣きそうな面して、俺ん部屋から出て行った。

「泣きそうなやつしか、んなこと、言わねぇって。」
< 38 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop