BORDER LINE
制限時間、残り1分弱。

少女の鍋には、めんまが一片、黒々としたスープに浮いている。

沸き上がる、オバさま達の応援コールのド真ん中で、

少女は、余裕なんですけど〜と言わんばかりに、最後のめんまをちびちびかじる。

その小憎たらしい態度に、親父さんが、悔しさを滲ませ、威勢良く声を掛ける。

「残り30秒だよ、嬢ちゃん、なかなかやるねぇ。ほらほら、スープも残さずきっちり飲みねぇ。完食ってぇのは、麺屑まで腹に収めることを言うのよ。それとも、もう腹いっぱいかぃ?」

少女は、言われた通り、ゴッキュゴッキュとスープを腹に収めてゆく。

親父さんが、汗と、ストップウォッチを手に握り締めながら、少女を、悔しそうに、そして、嬉しそうに見つめた。
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