BORDER LINE
母が、父と、離婚したのは、私が八つの頃である。

そのきっかけだの、コトの起こりだの、そんなことは知らない。

それでも、私は、確かに好きあっていたヒト達を繋いでいる糸が、いとも容易くほつれてゆくのを見ていた。

母が、オカシクなりはじめたのは、私が五つの頃であった。

五つの頃、母は、度々、父に怒鳴りつけるようになった。

六つの頃、母は、父に夕飯を用意してやらなくなった、掃除だってしてやらなくなった。

無気力に、ベッドに沈み込むようなった。

絵も描かなくなった。

そして、七つの頃、母は、いつか自慢気にかざしてみせた銀の結婚指輪を外した。
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