BORDER LINE
俺は、美術室で一人、キャンバスと向きあう、少女に静かに近づく。

少女の緩やかなタッチは、灰色の湖畔を碧に彩ってゆく。

木漏れ日の差し込む、水面がキャンバスの中で波打った。

少女は、背後に佇む、俺に気が付いていたようで、ゆっくり口を開いた。

「今日の試合、残念だったそうね。」

「あぁ。俺のミスだった。」

「落ち込んでんの?」

クルリと振り返った、少女は、ざまぁ、とでも言わんばかりにニシシと笑った。

「落ち込んでねぇよ。」

俺は、小憎たらしい笑みの少女に、ぶっきらぼうに返す。

すると、少女は、何故か絵筆を止めて、悲しげに微笑んだ。
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