ange~天使が恋した王子様~



「あなたはきっと今までとても辛い思いをしてきたんでしょうね。

でも、忘れないで。

あなたが生まれてくることを1番楽しみにしていたのは他でもない、命がけであなたを産んだ杏菜よ。

だから、あなたは精一杯生きなさい。

あなたが幸せになることを誰よりも望んだ、あなたのお母さんのために」


「ふっ、うぅ…………」


「杏菜はあなたを天使だと言った。
最期になによりの幸せをくれたあなたを、天使だと、言ったの。

そして、あなたを"杏樹"と名付けた」


「ange……フランス語で"天使"ですね」


「ええ」

苦しい。

嗚咽が漏れる。

喉が熱くて、苦しくて、胸が痛い。

お母さん…

どれだけの覚悟を。

どれだけの決意を。

私に捧げてくれたの?
< 280 / 484 >

この作品をシェア

pagetop