ange~天使が恋した王子様~
「あなたはきっと今までとても辛い思いをしてきたんでしょうね。
でも、忘れないで。
あなたが生まれてくることを1番楽しみにしていたのは他でもない、命がけであなたを産んだ杏菜よ。
だから、あなたは精一杯生きなさい。
あなたが幸せになることを誰よりも望んだ、あなたのお母さんのために」
「ふっ、うぅ…………」
「杏菜はあなたを天使だと言った。
最期になによりの幸せをくれたあなたを、天使だと、言ったの。
そして、あなたを"杏樹"と名付けた」
「ange……フランス語で"天使"ですね」
「ええ」
苦しい。
嗚咽が漏れる。
喉が熱くて、苦しくて、胸が痛い。
お母さん…
どれだけの覚悟を。
どれだけの決意を。
私に捧げてくれたの?