ange~天使が恋した王子様~


それから、お墓を拭いて、スズランを供えて、私は墓地を出た。

そして向かったのは1年前と同じ海。

潮の香りが微かな風に乗って私に届く。

波の音しかないこの状況も去年と同じ。

ただひとつ去年と違うのは私の手の中にスズランがないこと。

それがなんだか誇らしかった。



「杏」


「……………ほんと、去年のまんまだ」

今年は、逃げたりしないけど。

息が上がっているところまで、そのまま。

きっとまた、走ってきてくれたんだね。
< 306 / 484 >

この作品をシェア

pagetop