ange~天使が恋した王子様~


「は?」


「治療でアメリカ行ってた由紀が今日から戻ってくんだよ」


「嘘だろ?」

目を見開いたソウくんは信じられないというように震えた声で言った。


「ほんとだって‼︎さっき職員室前で俺見たし‼︎」


「俺も俺も‼︎見間違えるはずねぇよ‼︎」


「杏………」


「棗、」

そうか、だからあんなに焦ってたんだ…。

これを言おうとしたんだね。

それなら、これは…………事実だ。


「杏、大丈………」

そこまで言った棗は言葉を止めた。


「大丈夫だよ。私は、」


「杏、でも…」


「大丈夫。大丈夫だから」

私はなんどもそう言った。

棗に言い聞かせるように。

自分に、言い聞かせるように。
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