ange~天使が恋した王子様~
ポタッポタッ
「杏ちゃん…?」
私の目から溢れた雫が、布団を濡らしていく。
「え、なん、で…ちがっ、ごめ、」
「…………謝らなくていいよ」
楓くんは私の頭を優しく自分の胸に押し付けた。
「楓く、」
「辛かったね…」
「う、うぅ」
「がんばったね」
「ふぇ、っ…」
私はしばらく泣き続けた。
一瞬だけみたあの光景が離れなくて。
あの声が忘れられなくて。
あの真剣な表情が脳にこびりついて。
その瞳に、私は映ってなくて。
ねぇ、ソウくん。
こんなの、心配しないほうが無理だよ。
だって、勝ち目なんてないじゃない。
初恋の人に勝てるわけないじゃない。
ソウくんが本当は誰のそばにいたいのか。
誰を守りたいのか。
全部、わかってるのに…